労務相談Q&A

【令和6年4月】労働条件明示事項の追加

労働条件明示,明示事項,追加,改正
moyap

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人事労務関係の実務において、よくご相談を頂く内容をQ&A形式でご紹介をしています。

Question

相談内容

  • 労働条件明示事項が追加されると聞きました。いつからどう対応すれば良いですか?
  • そもそも労働条件の明示って何?具体的に何が変わるの?
  • 無期転換ルールってなんだっけ?

Answer

回答

  • 令和6年4月1日より、労働条件通知書または雇用契約書等により、以下の項目を追加で明示しなければなりません。
追加される明示事項
  • 就業場所・従事すべき業務の変更の範囲
  • 通算契約期間・更新回数の上限
  • 無期転換申し込みに関する事項及び無期転換後の労働条件
  • そもそも労働条件の明示義務とは、会社が労働者を雇い入れた際に、「あなたの労働条件はこうですよ」という書面を労働者本人に通知しなければならないルールです。詳細については、後述します。
  • そもそも無期転換ルールとは、有期雇用契約の期間が通算5年を超える場合に、労働者からの申し込みにより無期雇用契約に転換しなければならないルールです。詳細については、後述します。
ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

労働条件の明示義務違反については、労働基準法第120条より「30万円以下の罰金」とされています。

今のうちから改正内容を確認しておこう!

詳細のご案内

労働条件明示事項の追加

会社は、労働者と労働契約を締結又は更新する場合には、「労働条件を明示」しなければなりません。

※「そもそも『労働条件の明示義務』ってなに?」という解説は、補足として後述します。

今回の労働基準法施行規則およびそれらに関連する告示の改正(明示事項の追加)が令和5年3月30日に行われ、令和6年4月1日より対応が必要となります。

追加される明示事項

① 就業場所・従事すべき業務の変更の範囲

② 通算契約期間・更新回数の上限

③ 無期転換申し込みに関する事項及び無期転換後の労働条件

以下、それぞれ概要のご案内をさせて頂きます。

① 就業場所・従事すべき業務の変更の範囲

全ての労働契約の締結(雇い入れ)と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要となります。

※上記改正は有期労働契約に限られないことに注意が必要です。

※変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所や業務内容の範囲を指します。将来の可能性として明示が必要ということです。

② 通算契約期間・更新回数の上限

有期労働契約の締結(雇い入れ)と更新(契約更新)のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間の上限または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要となります。

③ 無期転換申し込みに関する事項及び無期転換後の労働条件

「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨、及び、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

※無期転換ルールについては後述します。

※初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新の都度、上記事項の明示が必要です。(毎回、無期転換申込権が発生する更新となるため。)

以上、追加事項、対象労働者、明示タイミングをまとめると、以下の表のようになります。

労働条件明示事項,追加,改正

具体的な対応・労働条件通知書の雛形紹介

まずは、今回の改正内容について確認し、明示すべき内容について事前に実態確認・状況整理を行います。

その上で、令和6年3月31日までに、必要に応じた改正内容(明示事項)を盛り込んだ労働条件通知書又は雇用契約書を作成します。

具体的には、以下の厚生労働省「モデル労働条件通知書」赤文字箇所を追記頂くイメージです。

ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

変更の範囲を限定しない場合には、包括的な記載が良いでしょう。

例えば「会社が定める業務」「会社が定める就業場所」という記載をしておくことで、範囲を限定せず、柔軟な対応が可能です!

そもそも、労働条件の明示義務とは?

労働条件等の理解不足による個別労働関係紛争を防止するため、労働基準法第15条では、労働契約締結(更新)時における「労働条件の明示義務」が設けられています。

つまり…

会社は、雇い入れの時に「あなたの労働条件はこうですよ」という書面を新たな労働者に通知しなければならない、ということです。

具体的な「明示事項」は、労働基準法施行規則第5条に定められており、以下の2種類があります。

  • 絶対的明示事項・・・必ず明示しなければならない事項
  • 相対的明示事項・・・会社が制度として定めている場合には必ず明示しなければならない事項

それぞれ、具体的には以下のような明示事項があります。

絶対的明示事項
  • 労働契約の期間
  • 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限含む)(有期労働契約で、契約更新する場合があるものの締結に限り、明示必要)
  • 就業の場所及び従事すべき業務(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む)
  • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
  • 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切日及び支払日、昇給
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的明示事項
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、退職手当の支払の時期
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他
  • 安全及び衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助
  • 表彰及び制裁(懲戒処分)
  • 休職
ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

「相対的明示事項だから記載しなくていいや」とはならないので注意!

特に「懲戒処分」「休職」就業規則への規定と合わせて、事前に記載しておくことで、何かあった時の対応(例:問題社員への処分や精神疾患等長期休業者への対応等)が可能となります。

なお、平成31年4⽉1⽇からは、 労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、SNS等でも明示できるようになっています。(※書面により出力可能な方法に限ります。)

詳細は以下の厚生労働省リーフレット「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」をご確認ください。

そのほか、根拠法令等については以下抜粋します。

労働基準法第15条(抜粋)

 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法第15条の「厚生労働省令で定める事項」は「労働基準法施行規則第5条第1項で定める事項」を指しています。

同様に「厚生労働省令で定める方法」は「労働基準法施行規則第5条第4項で定め方法」を指しています。

労働基準法施行規則第5条(抜粋)

 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。

  労働契約の期間に関する事項

 一の二 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)

 一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)

  始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

  賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

  退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

  臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

  労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

  安全及び衛生に関する事項

  職業訓練に関する事項

  災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

  表彰及び制裁に関する事項

 十一 休職に関する事項

 使用者は、法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。

 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

  ファクシミリを利用してする送信の方法

  電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

⑤ その契約期間内に労働者が労働契約法第十八条第一項の適用を受ける期間の定めのない労働契約の締結の申込み(以下「労働契約法第十八条第一項の無期転換申込み」という。)をすることができることとなる有期労働契約の締結の場合においては、使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、第一項に規定するもののほか、労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みに関する事項並びに当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち第一項第一号及び第一号の三から第十一号までに掲げる事項とする。ただし、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち同項第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。

⑥ その契約期間内に労働者が労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みをすることができることとなる有期労働契約の締結の場合においては、法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第三項に規定するもののほか、労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みに関する事項並びに当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち第一項第一号及び第一号の三から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

そもそも、無期転換ルールとは?

「無期転換ルール」とは、有期雇用の契約期間が通算で5年を超える場合に、労働者からの申し込みにより、無期雇用に転換しなければならないものです。当該申し込みの権利を「無期転換申込権」といいます。

例えば、1年ごとに更新をする労働契約であれば、5回目の契約更新を行った後に通算契約期間が5年を超えることになるので、5回目の契約更新時点で無期転換申込権が発生します。申し込みがあれば、次回契約更新時から無期雇用に転換します。

ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

無期転換の申し込みがされた場合、会社は拒否できないので注意!

関連する改正(求職者への明示事項の追加)

職業安定法施行規則の一部を改正する省令により、ハローワークや職業紹介事業者等を通じて求人をする場合についても、求職者への明示事項が追加されます。

追加される明示事項
  • 就業場所・従事すべき業務の変更の範囲
  • 有期労働契約を更新する場合の通算契約期間・更新回数の上限
ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

追加される明示事項は労働契約の締結・更新の改正と同じだね!

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社会保険労務士(有資格者)
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