労務相談Q&A

リファラル採用の報奨金は従業員に支払える?

リファラル採用,報奨金,職業安定法
moyap

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人事労務関係の実務において、よくご相談を頂く内容をQ&A形式でご紹介をしています。

Question

相談内容

  • 人材採用の難化から、社内にてリファラル採用制度(従業員紹介制度)を創設し、紹介してくれた従業員に対し、3万円〜5万円程度の報奨金を支払うことを検討していますが、問題ないでしょうか。

Answer

回答

  • 原則として、報奨金の支払いをしてはいけません。
  • 例外として、就業規則等に予め規定することにより、報奨金を賃金又は賞与の一部として支払うことができます。
ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

原則禁止、例外としてOK…

違法な取り扱いにならないよう慎重に考えたいね。

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そもそも「リファラル採用」とは

リファラル採用」とは、従業員に人材を紹介してもらい採用に結び付ける採用手法です。英語で「リファラル(Referral)」は「紹介」や「推薦」を意味するので、従業員紹介制度と呼ばれることもあります。

ハローワークや求人サイト、転職エージェントを介しての採用活動と比較して、社員であれば自社のことをより詳しく知っているため、マッチング率や定着率が高い可能性があります。

労働者の募集とは

労働者の募集については、職業安定法第4条第5項の規制に違反しないよう注意が必要です。

職業安定法第4条(抜粋)

1 この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。

2 この法律において「無料の職業紹介」とは、職業紹介に関し、いかなる名義でも、その手数料又は報酬を受けないで行う職業紹介をいう。

3 この法律において「有料の職業紹介」とは、無料の職業紹介以外の職業紹介をいう。

4 この法律において「職業指導」とは、職業に就こうとする者に対し、実習、講習、指示、助言、情報の提供その他の方法により、その者の能力に適合する職業の選択を容易にさせ、及びその職業に対する適応性を増大させるために行う指導をいう。

5 この法律において「労働者の募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。

〜6項以降省略〜

この条文によると、労働者募集には次の2種類があることがわかります。

  • 直接募集 → 自ら勧誘
  • 委託募集 → 他人に委託して勧誘

また、職業安定法第36条によると、委託募集を行うにあたり、報酬ありの場合は厚生労働大臣の許可及び認可が、報酬なしの場合は厚生労働大臣の届出が必要になります。

職業安定法第36条(抜粋)

1 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2 前項の報酬の額については、あらかじめ、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

3 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えることなく労働者の募集に従事させようとするときは、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。 

「被用者」とは、「自社の従業員」というイメージです。

第1項に違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(職業安定法法第64条)、第2項・第3項に違反した場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(同法第65条)の対象になります。

ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

第3項の通り、報酬なしの委託募集であっても届出が必要です!

リファラル採用による労働者募集と報奨金

リファラル採用は、被用者が勧誘する(自社が直接勧誘する)ので、直接募集に該当すると考えられています。そのため、前述の第36条に規定されている許可や届出は不要となります。

ただし、直接募集に関して、職業安定法第40条では報酬の供与を禁止しています。

職業安定法第40条(抜粋)

労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

違反した場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(同法第65条)の対象になります。

条文だとややこしい表現ですが、要するに『原則報酬を与えてはならない。ただし、労働者の募集(自社への紹介)をする被用者(自社の従業員)に対して、賃金や賞与として支払う場合はOK』ということが読み取れます。

ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

『賃金、給料その他これらに準ずるもの』であれば報奨金(紹介料)を支払ってもOK。職業安定法違反にもならないということだね!

就業規則への規定

前述の通り、労働基準法上の「賃金」又は「臨時の賃金(賞与)」として支払うことで、リファラル採用についての報奨金を支払うことができます。

労働基準法第11条(抜粋)

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

加えて、労働基準法によると、賃金等として扱う場合には、労働条件の明示及び就業規則への規定が必要があります。

労働基準法第15条第1項(抜粋)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

就業規則の中には記載すべき事項が定められています。 

  • 賃金 → 絶対的必要記載事項
  • 臨時の賃金(賞与) → 相対的必要記載事項

「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」については、次の記事をあわせてご確認ください。

就業規則には何を書けばいいの?
就業規則には何を書けばいいの?
ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

逆に、就業規則等に定めておかないと、報奨金の支払いが職業安定法違反とみなされる可能性が出てきます!

その他就業規則に関する各種相談については、以下の記事等で説明していますので、ご確認ください。

就業規則って何?作るメリットあるの?
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就業規則の届出方法は?周知義務って?
就業規則の届出方法は?周知義務って?

社会保険料の対象

賃金として支給する以上、当然に社会保険料の対象となります。

毎月決まって支給されるものではないので、賞与として報酬扱い(賞与支払届の届出)による対応が適切であると考えます。

その他の労務相談Q&A・ちょこっと情報の記事

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は、リファラル採用の報奨金について、実務においてちょこっと疑問に思う部分の説明をさせていただきました。

実務担当者が制度をしっかりと理解した上で、対象労働者に対し丁寧な説明ができるといいですね!

ちょこシャロくん
ちょこシャロくん

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社会保険労務士(有資格者)
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