社会保険労務士とは
この記事では、社会保険労務士試験の受験を検討している方や、社会保険労務士について知りたい方向けに、以下の疑問にお答えします。
- 社会保険労務士ってどんな資格なの?仕事内容は?
- 社会保険労務士資格取得後はどんなキャリアプランがあるの?
- 社会保険労務士ってぶっちゃけ稼げるの?
- 将来的に必要とされる資格なの?
私も最初は、どんな資格なの?出題形式や難易度は?合格率や平均勉強時間は?年収は?という疑問について、複数のブログを閲覧するところから始めました。そして、いくつか合格体験記を読んで、後押しされるような気持ちで「よし、やってみよう!」と思い、無事合格することができました。そんな感じで、私も、少しでも後押しができたらいいなと思っています
まずは『社会保険労務士』ってどんな人?ってお話からだよ!
社労士とは
社会保険労務士は、略して『社労士』と言われ、社会保険労務士法に基づいた『国家資格者』です。
『ヒトに関する専門家』
企業の成長には、人材(ヒト)、モノ、お金(カネ)、情報が必要とされておりますが、社労士はその中でも人材に関する専門家です。社労士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。具体的な仕事内容は後でお話します!
中小企業の代表とお話をすると、よく「顧問税理士の〇〇さんに何でも相談できる」という話を聞きます。これは『税理士=カネに関する専門家』というイメージだからです。これと同じで、『社労士=ヒト(従業員)に関する専門家』として、大事な相談先になります!
また、社会保険労務士連合会のホームページに、社労士の役割を表現したアニメーションが4つほど公開されていましたのでご紹介します
社労士が扱う主な法律
試験科目となる主な法律
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
※社労士試験では、「一般常識科目」としてその他の法律も出題されます。
社労士試験について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
その他実務で扱う法律
上記のほかにも、実務では、様々な法律が絡んできます。労務相談実務を行なっていても、ご相談を頂いてから調べていくしかないような細かい部分を質問されるケースも多く、日々勉強です。
- 労働契約法
- 最低賃金法
- 育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の設備等に関する法律
- 職業安定法
- 雇用対策法
- 中小企業退職金共済法
- 障害者の雇用の促進等に関する法律
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
- 賃金の支払の確保等に関する法律
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法律
- 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
- 国民健康保険法
- 児童手当法
- 介護保険法
- その他にもいろいろ…
実務ではたくさんの法律が関わってくるんだね!
社労士の意義
社労士は、これら『働く人を守る法律』の知識を駆使して、例えば、長時間労働の抑制を行なったり、育児休業をしっかり取れる職場づくりをしたりと、ワークライフバランスの取れた働きやすい環境作りに貢献します。
『人を大切にする企業・社会』づくりのために働く人の笑顔を支える『労働・社会保険に関する法律のエキスパート』といった感じです!
社労士の仕事内容
ここからは具体的に、仕事内容を解説していきます!
社会保険労務士の仕事について、以下の5つに分類して説明します。
- 労働社会保険手続業務
- 労務管理の相談指導業務
- 年金相談業務
- 紛争解決手続代理業務
- 補佐人の業務
労働社会保険手続業務
企業における労働社会保険への適正な加入、諸手続きを行います。例えば、従業員の入退社(雇用保険や社会保険の取得喪失)、労働社会保険料の申告、万が一仕事中に怪我をした従業員がいれば労災申請、その他の各種手続きは多岐に渡ります。
これらの手続きを行わずにいると、従業員の労働災害や失業、病気やケガ、あるいは定年後の年金などについて、給付を受けられないなどの重大な不利益につながってしまうだけでなく、従業員と揉めて、コンプライアンス的にも問題になる恐れがあります。
しかし、労働社会保険の手続きは、制度の複雑化に伴い、書類の作成に時間を費やす等、経営者や人事労務担当者の大きな負担となっています。また、年度更新や算定基礎業務は、その基礎となる賃金の定義や保険料の算出について専門的な知識が必要となり、申告額に誤りがあると追徴金や延滞金を徴収されることもあります。
社労士は、労働社会保険の業務を代行することで、円滑かつ的確に行うだけでなく、経営者・人事労務担当者の諸手続にかかる時間や人件費を大幅に削減します。
法改正の多い労働社会保険の諸手続きについて、専門家である社労士が適切に処理することにより、企業の経営者や人事労務担当者の負担を軽減します。
国の政策として、雇用や人材の能力開発等に関する助成金があります。助成金は事業運営の強い味方となりますが、受給するための要件は助成金ごとに異なる為、活用をためらう経営者も多くいらっしゃいます。
助成金の受給対象となるかといった相談や、煩雑な申請手続を社労士が適切に行い、企業の発展を支援します。
法定帳簿である労働者名簿及び賃金台帳は、記載事項に不備がある場合、罰則の適用もあります。社労士は、これらを適正に調製していきます。
社労士は、法改正に対応した就業規則、また、労働環境にしっかりと配慮した労使協定(36協定)の作成・見直しを支援します。
労務管理の相談指導業務
企業経営の要素である「ヒト、モノ、カネ、情報」のうち、「ヒトを大切にする経営」が労働者がいきいきと働ける環境をつくり、生産性の高い職場、さらに好業績の企業をつくるものと考えます。
社労士は、「ヒトを大切にする経営」を実現するため、良好な労使関係を維持するための就業規則の作成・見直しをお手伝いします。
それだけでなく、労働条件や労働環境について、日々様々な『労務相談』の対応を行うことも、社労士の重要な仕事です。
- 問題社員を辞めさせたいんだけど、どうしたらいいの?
- 急に来なくなった従業員への対応はどうしたらいいの?
- ハラスメントだって言ってきた従業員がいるんだけど、これってどうなの?
- テレワークを始めようと思うんだけど、まずどうしたらいい?
- 育休を取りたいという従業員は初めてなので教えて欲しい
- 何かうちの会社で活用できる助成金を教えてほしい
- 年次有給休暇ってあげなきゃいけないの?
- 固定残業代制度を導入したい
- 労働基準監督署から調査の連絡が来たんだけど、どうしたらいい?
など、様々な相談に対応していきます。
当ブログでも『労務相談Q&A』として、少しでもお役に立つ情報を発信していきますので、以下の記事をご覧ください。
人事労務管理の専門家として、適切な労働時間の管理や、優秀な人材の採用・育成に関するコンサルティングをご提供し、企業の業績向上に繋がるご提案をします。
企業や職場の実情に合わせた人事、賃金、労働時間に関するご提案をします。
就業規則や法定帳簿等の書類関係の他、実際の運用状況についてまで監査を行うことで、企業のコンプライアンス違反だけでなく、職場のトラブルを未然に防止することができます。
年金相談業務
国民皆年金として、全ての国民が年金制度に加入しています。社労士は、「公的年金に関する唯一の国家資格者」として、国民の年金に関する権利を守る立場から、年金相談対応を行います。
「障害年金」や「遺族年金」といった、老後の生活を支える「老齢年金」以外の給付制度や「離婚時の厚生年金保険の分割制度」などがあることは、意外と知られていません。手続きが煩雑なだけでなく、「知らない」「分からない」といった理由で、本来受けられるはずの年金を受けられないこともあります。
複雑な年金制度をどなたにも分かりやすく説明し、ご自身の受給可能な年金についてご理解いただき、必要に応じ各種の事務手続をお手伝いすることも、社労士業務の1つです。
年金加入記録に基づいて、年金をいつから受け取ることができるのか、いくら受け取ることができるのかなど、複雑な年金制度について、専門家である社労士が年金相談に対応します。
年金は受給資格を持っていても、自動的に支給が開始されず、申請手続きが必要となります。社労士が、素早く適切に、手続きを代行して進めることができます。
紛争解決手続代理業務
労働にかかわるトラブルが発生したとき、ふと思い浮かべるのが『裁判』です。しかし、裁判はお金も時間もかかるだけでなく、一般公開されるので、経営者と労働者が互いに名誉や心を傷つけあう結果にもなりかねません。
そこで、『ADR』とは、裁判によらないで、当事者双方の話し合いに基づき解決する手段です。このADR代理業務は、『特定社労士』が行うことができる業務です。
特定社労士は、トラブルの当事者の言い分を聴くなどしながら、労務管理の専門家である知見を活かして、個別労働関係紛争を「あっせん」という手続きにより、簡易、迅速、低廉に解決します。
特定社労士は、問題解決に向け「あっせん」に必要な手続を代行することができます。
労働問題の専門家である特定社労士が、当事者の考えを法的に整理し、円満な解決に導きます。
補佐人の業務
労働保険や社会保険の制度はとても複雑で、適用や給付をめぐる国民と行政のトラブルも増加しています。このようなトラブルは、労働社会保険の各法律や行政不服審査法に基づく審査請求によって解決しないとき(結果に不服がある場合)には、『裁判』をすることになります。
また、個別労働関係紛争についても、職場のトラブルを企業内で解決できない場合は、依頼者が『裁判』による解決を望むこともあるかもしれません。
このような場合に、社労士は補佐人として、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。
社労士は補佐人として、労働社会保険に関する行政訴訟の場面や、個別労働関係紛争に関する民事訴訟の場面で、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。
依頼者は、相談の段階から支援を受けてきた社労士が、補佐人として弁護士とともに訴訟の対応にあたることで、安心して訴訟による解決を選択することができるようになります。
社労士の登録・キャリア
社会保険労務士として活動するためには、社労士試験に合格し、実務経験または事務指定講習などの要件を満たした上で、社会保険労務士連合会というところに登録をする必要があります。
その登録方法は、以下の3つに分けられています。
- 開業登録
- 勤務等登録
- その他登録
以下、それぞれの特徴を解説します。
開業登録
開業登録は、社労士事務所を立ち上げる場合に必要な登録です。自分の事務所を持って、自分で仕事を取ってきて、自分で稼ぐ。会社や上司に縛られることもなく、頑張り次第では収入の上限もありません。こういった働き方を夢見ている方も多いのではないでしょうか。
自分一人で事務所運営する場合も、規模を大きくして従業員を雇用して運営する場合も、社労士事務所を構えるときには開業登録を受けた社労士の存在が不可欠です。また、税理士事務所など他士業事務所内で開業する場合や、社労士法人の法人社員(いわゆる「代表」)となる場合にも、個人の開業登録が必要となります。
『開業して年収2000万円』も実現できるかもしれないね!
勤務等登録
勤務登録は、社労士事務所や社労士法人に雇用されて社労士業務に携わる場合に必要な登録です。会社内で社労士業務に従事する場合(一般企業の人事部や総務部など)にも必要です。
ただし、勤務社労士である以上、開業登録とは違って、依頼があっても顧客と直接契約し、社労士業を行うことはできません。
勤務登録の場合は、勤務先以外の仕事を引き受けることができないんだね!
一般企業では、会社によっては、勤務登録をしなくとも、社労士試験合格者に対して「資格手当」を支給するところもあります。独立開業や社労士法人への転職だけでなく、今の会社でのキャリアアップという目的で社労士試験を受験する方も多いと思います。
その他登録
その他登録とは、勤務等登録の一部であり、勤務先を指定して登録しなければ自動的にその他登録とみなされます。
その他登録の場合、社労士業務に携わることはできませんが、社労士会や支部の集まりや研修には参加できます。
「今は社会保険労務士として活動するつもりはないが、将来のために事前の準備をする人」「開業社労士もしくは勤務社労士だったが事情があって一時的に休業している人」などがこういった登録方法を選んでいます。
社労士の平均年収は『約780万円』
受験するか悩む方で「資格取得した後、本当に年収が高くなるのであれば受けようかな…」なんて考える方も少なくないはずです。
そこで、多くの方が気にされている『社会保険労務士の平均年収』をズバリ発表します。ここでは、厚生労働省が行なっている「令和4年賃金構造基本統計調査」の値を元に、紹介いたします。
『約780万円』
上記の調査のうち、『職種(小分類)、性別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)』という統計の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」という区分の数字をベースに算出しています。
- 「決まって支給する現金給与額(月額)」が「507,900円」で、
- 「年間賞与その他特別給与額(年額)」が「1,713,800円」でした。
- そのため、合計で「年額7,808,600円」になります。
勤務社労士で給与をもらっている場合と、開業社労士で収入が青天井の場合とでは、平均ばかりが参考になる訳でもないね。
知り合いの開業社労士でも、年収1000万円超えも(2000万円も!)割といるイメージです!頑張り次第だね!
社労士の将来性
ここまで、社労士の仕事内容や登録方法、年収のイメージについて説明をしてきました。ここでは、そんな社労士の知名度ってあるの?そもそも将来ずっと必要とされるの?と行ったことをお話します。
健康保険証もマイナンバーカードが使えるようになるみたいだし、相談もAIが発達してきているし、社労士の将来性ってどうなんだろう?
私は、社会保険労務士の将来性はあると考えています。
AIが発達しているとはいえ、まだ労務相談に対応できるような知能はないと考えます。また、労務相談は従業員と会社(労働者と使用者)、『ヒト対ヒト』の問題です。労働条件や労働環境をめぐる問題は多岐に渡り、相談内容もケースバイケースです。
相談者にとっても、杓子定規な回答が欲しいわけではなく、話を聞いてほしい、忙しい中で問題社員が出てしまった私の境遇を理解してほしい、こんな事情があるのに会社に理解してもらえない等、相談の理由や意図も様々であると考えます。
問題が『ヒト対ヒト』であるように、相談も『ヒト対ヒト』で行うべきであると考えます。ヒトの優しさや相談者を理解する心は、AIに代わることはないのではないでしょうか。
労務相談だけでなく、『老後2000万円問題』で浮き彫りになった老後資金の不安、年金に関する相談は今後も絶えないと思います。年金の専門家でもある社会保険労務士として、これらの疑問や不安の解消をお手伝いをしていくことは、今後も必要とされると考えます。
社労士資格は就職・転職に有利?
就職・転職には、『とても有利』だと思います。
社労士資格は就職・転職に不利って噂は本当?
たまに『社労士資格を持っていると転職に不利』なんて噂があります。
これは「法令遵守を徹底していて、細かく文句を言いそう」とか「頭が固くて融通が効かなさそう」といったイメージからくるものです。
しかし、もし実際に、法令遵守を指図されるのを危惧して社労士有資格者を嫌悪するような企業があるのであれば、敢えてそのような会社に行く必要はないと思います。
コンプライアンス重視の時代となる中、マイナスイメージを持つ企業より、プラスイメージを持つ企業の方が多いでしょう。
社労士資格はアピールできる?
実際、資格自体の比較をする訳ではありませんが、FP2級や簿記2級を取得している人が多い中で、社労士を取得していると、かなり珍しく、目を惹きます。
また、少なくとも採用担当者は人事労務に直接携わる方なので、社労士資格の存在を知っており、有資格者または勉強中である可能性も少なくありません。面接で「へ〜、社労士持ってるんだ〜」という話は、間違いなく出ると思います(笑)
就職先・転職先が社労士法人や人事労務関係部署であれば、資格が直接アピールになると考えます。
そうではない場合でも、資格取得に向けて、計画を立ててスケジュール管理もしっかりして、コツコツ努力して、将来に向けて前向きに取り組み、自己研鑽に励み、分からない問題にはこうやって対処して解決して、といった『資格取得までの過程』が大きなアピールポイントになります。
実際、大学3年生のときに、「社労士勉強中」と言っただけで、大手食料品メーカー人事部の偉い人から採用選考優遇の話と名刺をもらえたこともあるよ!
社労士の資格を取得した感想
私は、独学からスタートして、最初の試験までの、いわゆる『一周目の勉強』は本当に楽しかったです!そこから、2度目3度目…と中だるみ期間を経て、6度目でようやく合格しました。(一発合格者のブログがたくさんある中で、少し恥ずかしいですが…)
合格体験記について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
また、社労士法人によりますが、『資格取得に向けて勉強中』という方も多くいらっしゃいます。大学在学中に合格する方も稀にいますが、大体は働きながら取得する方だと思います。そのため、資格取得をすると、職場で割とチヤホヤされます(笑)
そんな中で社労士試験に合格すると、会社によっては「資格手当」がついてキャリアアップにも繋がります。
働きながら資格の勉強をしている人が多いんだね!
また、社労士登録をすれば、名刺に『社会保険労務士』の記載ができますので、「社労士法人の〇〇さん」から「社労士の〇〇先生」となり、自分自身の発言や回答にも箔が付き、お客様との信頼関係を構築することにも繋がると思います!
まとめ
今回の記事では社会保険労務士という資格について詳しく書かせていただきました。
社労士とは?仕事内容とは?合格後の登録方法や年収は?といったお話に興味を持って頂けたら嬉しいです!
そして、社労士試験の受験を検討している方に向けて、少しでも後押しができたらいいなと思います。
「社労士試験の受験をしてみよう!」と思った方は、是非、以下の記事もご覧ください。