【ちょこっと情報】仕事と介護の両立についての現状と法改正
昨今、団塊の世代の高齢化に伴い、ビジネスケアラー(仕事をしながら介護をしている人)が増加しています。加えて、介護による休職、介護離職の増加が企業における問題となっています。今回は、介護を取り巻く状況や介護休業に関する法改正内容について紹介します。
令和7年4月施行の育児介護休業法改正に向けて、事前に対応方針を検討し、準備しておきましょう。
介護業界の現状と介護離職
介護離職
総務省の就業構造基本調査によると、介護が理由で離職・転職した方は、年間約10万人に上ります。また、同調査より、ビジネスケアラーは約300万人に上るとされ、45歳以上人口の約10%に相当すると考えられます。
特に介護離職リスクの高い世代は、40代~50代であるとされています。老老介護が問題に挙げられることもありますが、親が高齢となり介護が必要となるケースが多いです。この40代~50代は、特に働き盛りの管理職やベテラン世代であることが一般的に見受けられ、介護離職による職場体制の乱れに大きな影響があることが懸念されます。
介護業界の今後
団塊の世代が75歳以上を迎え、総人口の約3割が75歳以上となる超高齢化現象を2025年問題といいます。今後の動向として、医療や介護ニーズの高まり、介護離職の増加、医療・介護従事者の人手不足等が懸念されます。
さらに、2040年問題として、85歳以上人口比率が約6割になり、少子化の影響も重なることで、生産年齢人口の減少が懸念されます。加えて、高齢者の増加に伴う認知症患者の増加も問題となることが予想されます。
介護休業の概要と法改正
概要
そもそも「介護休業」とは、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業です。労働者が介護離職を選択することなく、仕事と介護の両立ができるように設けられた制度で、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業を取得することができます。
法改正の内容と対策
介護休業制度(仕事と介護の両立支援制度)の周知強化のため、令和7年4月1日から育児介護休業法が改正されます。主な法改正の内容とその対策は、次の通りです。
介護に直面した旨の申出をした労働者に対し、介護休業等制度の個別の周知・意向確認の措置をすること。
介護休業に関する個別周知・意向確認等への対応については、厚生労働省より社内様式のひな型が公開されることが予想されます。最新の情報に注意しましょう!
介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供を行うこと。
介護に関する外部セミナーの受講や、社内研修も効果的でしょう。
相談窓口の設置や研修の実施等、仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備すること。
環境整備の義務化への対応については、「①自社で対応する」「②外部相談窓口のサービスを利用する」「③①と②を併用する(情報提供や教育研修のみ外部サービスを利用する)」といった方法が考えられます。会社の体制や方針に応じて検討しましょう!
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務を課すこと。
介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止すること。
リーフレット
法改正の概要については、厚生労働省HPのリーフレット「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内」をあわせてご確認ください。
介護に関する課題
厚生労働省の調査(令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書)によると、令和3年度時点で、相談窓口・担当者を設置済みの企業は3割未満となっています。
また、介護に直面した労働者が、両立支援制度(介護休業制度や介護休業給付金制度)や介護サービスにどのようなものがあるのか分からない等の制度周知に関する課題も見受けられます。その他、介護休業期間が短すぎて足りないという意見もあるとのことです。
介護支援制度・介護サービス
企業における介護支援制度として、以下が準備されています。
- 介護休業
- 介護休暇
- 所定労働時間短縮措置(短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤等)
- 時間外労働や深夜労働の制限
- ハラスメント防止
- 不利益取り扱いの禁止 等
在宅介護サービスとしては、以下のようなものがあります。
- 訪問介護
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具貸与
- 訪問看護
- 訪問入浴介護 等
介護施設としては、以下のようなものがあります。
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護医療院
- 介護老人保健施設
- ケアハウス
- グループホーム 等
その他、市区町村、地域包括支援センター、ケアマネジャー等への相談や、民間事業者、ボランティア、地域サービス等を活用する方法も考えられます。費用面等も考慮し、対象家族の状況にあった方法を探していくとよいでしょう。
特に地域の介護サービスは、要介護状態というだけでなく、介護状態の悪化防止や介護予防を目的に利用することも可能です!
介護休業の期間
前述の通り、介護休業は対象家族1人につき93日まで取得可能な制度です。この介護休業期間について、雇用保険法に基づき一定の要件を満たす場合には、休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。
93日間の休業では介護期間として足りないという問題が生じ、職場復帰後に仕事と介護の両立が難しく、介護離職を選択する労働者が一定数存在するというのが現状です。
この介護休業期間は、その期間内で介護を完結させるためではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間」として活用するとよいでしょう。
介護休業期間では、対象家族の状況を把握し、前述の介護サービス、介護施設や地域サービス等を選択・手配をし、体制が整備された後に職場復帰をするのが理想的な活用方法であると考えます。
介護と仕事の両立に向けて
前述の厚生労働省の調査によると、介護離職をしても、精神面、肉体面、経済面において負担が増したとの回答が約6割に上るとのことです。介護に専念する分、精神的にも負担が大きく感じられます。
ビジネスケアラーの仕事と介護の両立に関するポイントとしては、次の3点が大切です。
- できるだけ介護のプロに任せる
- 一人でかかえこまない
- 介護する側の人生や時間も大切にする
企業の介護休業制度、国、地域その他の介護サービス等をうまく活用することで、両立を目指していきましょう。
「一人でかかえこまない」については、法改正対策を機に労働者の理解を深め、周囲のサポート体制も整備できると良いでしょう。
また、介護休業からの職場復帰後においても、介護休暇、所定労働時間短縮、所定外労働の制限等を活用することで、ビジネスケアラーの負担を軽減することも大切でしょう。
東京労働局HP(特設ページ)のご紹介
今回の育児介護休業法の改正においては、介護休業だけでなく、育児休業に関する改正も多く含まれています。この記事で紹介しきれていない詳細については、東京労働局HPにて公表されている特設ページをご覧ください。
この特設ページでは、育児休業や介護休業等に関する法改正についての最新トピックスやリーフレットの掲載だけでなく、「育業360度徹底解説!」や「3分育休」と題して、動画による制度解説もしています。会社の人事総務担当だけでなく、育児を行うご本人(育児休業等の取得を検討する方)へ向けたとても分かりやすい内容になっていますので、各労働者の制度理解にも活用できそうです。
その他、法改正に伴い就業規則及び育児介護休業規程の改定が必要になることが見込まれます。厚生労働省より規程例が発出されることが予想されますので、最新の情報に注意し、改正施行前に準備を整えましょう。
その他の社会保険労務士資格関連の記事
おすすめの勉強方法
育児介護休業法の改正については、一般常識科目対策として傾向は一度目を通しておくことをお勧めします。
独学で法改正や実務上注目される論点について追い切るのはかなり大変です。少しお金をかけてでも、独学ではなく通信講座を使って、効率よく最短合格を目指すことが望ましいかもしれません。
当ブログでは、『資格合格パートナー スタディング社労士講座』をお勧めしています。
スタディングの講義は、紙のテキストや板書を用いず、スライドの図表が講義の説明に合わせて動くため、制度の仕組みや切り替わり等もビジュアル的に分かりやすく理解が進みます。
文章のみでは難解な法令の言い回しも、「豊富な図表を駆使したスライド」により、テレビの情報番組を見るように分かりやすく楽しく学習できます。
他の予備校の通信講座と比較しても圧倒的にコスパが良いのが特徴です!
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、介護業界の現状と令和7年4月以降に施行される予定の育児介護休業法の改正について、ご紹介をさせていただきました。
実務に携わる方の情報整理だけでなく、社労士試験合格を目指している方の後押し(実務イメージ)ができればいいなと思います。