シフト制等により日ごとに所定労働時間が異なる場合の「年次有給休暇取得時の賃金」はどう計算する?
人事労務関係の実務において、よくご相談を頂く内容をQ&A形式でご紹介をしています。
Question
相談内容
- 曜日や日によって所定労働時間が異なる労働者が年次有給休暇を取得した場合の賃金はどのように計算しますか?
- シフト制を採用している場合で、所定労働時間がバラバラで年休取得時賃金の計算が面倒です。定額支給とすることはできますか?
Answer
回答
- 予め就業規則や雇用契約書により定めた以下のいずれかの方法で計算して支払う必要があります。
会社が都度計算方法を変更したり、低い支給額となるように計算方法を人によって都度選択したりといったことは認められないんだね。
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年次有給休暇取得時の賃金決定方法
シフト制により、「3時間勤務の日もあれば、7時間勤務の日もある」といった場合に、年休取得申出があったらどうすれば良いのか、というご相談はかなり多くいただきます。
シフト決定前に「働けない予定の日」を予めを聞いているので、シフト決定時点で既に休みたい日は所定休日になっている。その上で所定休日に年休取得申出をしてくる、なんて話も聞きます。
そもそも年次有給休暇は、労働義務のある日に取得可能(取得日の労働義務を免除する効果あり)です。その為、所定休日には労働義務がありませんので、もともと休日となっている日に年次有給休暇を取得する余地はありません。
言い換えると、「シフトに入っている日」に年休取得が可能となります。
すると、所定労働時間分の賃金を支給するものとして、3時間シフトの日に休めば3時間分の賃金を支給し、7時間シフトの日に休めば7時間分の賃金を支給する、とすれば分かりやすいですね。
ただここで、労働者目線に立つと、「長時間勤務が予定されている日を選んで年休取得申出をしよう」と考える気持ちも分かりますよね。取得日によって不公平にならないよう、労働基準法施行規則では『平均賃金』による計算方法も準備されています。
以下、労働基準法及び労働基準法施行規則を確認してみましょう。
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
上記「厚生労働省令」とは、以下の「労働基準法施行規則」のことを指しています。
法第39条第9項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次に定める方法によつて算定した金額とする。
一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
② 法第39条第9項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金又は前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。
③ 法第39条第9項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。
上記労働基準法及び労働基準法施行規則の定めに基づき、曜日や日によって労働時間が異なる場合であっても、以下のいずれかの方法にて計算をします。また、どの計算方法で支払うかをその都度変えることは認められておらず、予め就業規則や契約書にて定めた方法にて支払う必要があります。
年次有給休暇を取得した日から遡って直近3か月に支払った賃金の総額を平均した金額を支払います。実際の勤務実態に合った正確な賃金を計算することが可能となります。しかし、取得する月ごとに直近の3か月は変わる為、都度計算が必要です。
雇用契約書等で定められた勤務時間分の賃金は、本来支払われる通常の賃金となります。例えば、月水金は7時間、火木は5時間の雇用契約の場合、年次有給休暇を取得した日が月水金であれば7時間分の賃金、火木であれば5時間分の賃金を支払います。
健康保険料を決める際の「標準報酬月額」を30で割った金額を支払う方法となります。この方法は、労働者に不利益になる可能性がある為、予め『労使協定』を締結する必要があります(この労使協定は監督署への届出は不要です)。
シフト制など「日によって所定労働時間に差がある場合」には、「長い所定労働時間の日に年次有給休暇を取った方がお得」にならないよう、平均賃金により計算する方法を採用しているところも多いです!
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引用元:資格の大原HP
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