【ちょこっと情報】公正な採用選考と就活ハラスメント
昨今、企業における人手不足が喫緊の課題として注目されています。なかなか良い人材からの応募がこないため、少しでも良い条件で求人票を出そうと考えることがあるのではないでしょうか。採用選考や入社直後の問題が見受けられる中で、求人情報や採用面接の在り方については、「公正な採用選考」をめざして対応していくことが求められます。
厚生労働省HPにおいて「公正採用選考特設サイト」が設置されていますので、あわせてご確認ください!
公正な採用選考とは
基本的な考え方
採用選考及び入社直後の問題として、「就活ハラスメントを受けた」「採用面接時の不適切な質問をされた」「求人票の応募情報と入社後の労働条件が異なる」といったものが挙げられます。適切で公正な採用選考を行うことで、会社の信頼性が向上し、最終的には労働者の満足度向上、モチベーション向上や人材定着にも期待できます。
特定の人を排除せず、求人条件に合致する全ての人が応募できるようにしましょう。まずは次の事項が遵守されているかご確認ください。
- 性別にかかわりなく均等な機会を与える(男女雇用機会均等法)
- 障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与える(障害者雇用促進法)
- 原則として年齢制限を設けない(労働施策総合推進法)
「応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうか」を基準として採用選考を行いましょう。
本人の適性や能力とは関係のない事項(就職差別につながるおそれがある事項)を採用基準にしないことが必要です。
就職差別につながるおそれがある事項
採用面接における質問事項に不適切なものがないか、予めチェックをしておきましょう。厚生労働省HP掲載のリーフレットでは、以下のように就職差別につながるおそれがある事項が列挙されています。
次の事項は「本人の適性や能力とは関係ない」ことから不適切とされます。
- 本人に責任のない事項を把握すること
- 思想・信条にかかわる事項を把握すること
- 不適切な採用選考の方法を実施すること
※大阪労働局HPに具体的な質問(不適切な質問)の例とその理由が詳しく列挙されていますので、参考になると思います。
実態として、応募者の緊張を和らげる目的で、出身地や家族に関する質問をすることはよく見受けられます。「選考結果には影響しないこと」をきちんと伝えることが重要です!
上記に加えて、採用面接時の質問事項、会話の内容や表現方法については、後述の「就活ハラスメント」にならないよう適切な配慮をしましょう。
就活ハラスメント
就活ハラスメントとは
就活ハラスメントとは、採用する企業やその採用担当者が、優越的な立場を利用して就職活動中の学生等に行うハラスメントのことをいいます。
採用選考やインターンシップを行う際の、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘いのようなセクシュアルハラスメントや、「やる気がないなら辞退しろ!」という威圧的な態度によるパワーハラスメント等が該当します。
企業におけるリスク
まず、ハラスメントを起こした会社として、企業イメージが低下し社会的信用を失うリスクがあります。そして、会社の使用者責任が問われ、ハラスメント被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。その他、ハラスメント行為を行った行為者は刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。
また、ハラスメント被害者が学校等に報告することで、応募が減少することも考えられます。
未然防止と対策
そもそもハラスメントが「禁止行為」であることを明確にしておく必要があります。下記の点について就業規則への明示等の方法により労働者へ周知しましょう。
- 就活ハラスメントを含むすべてのハラスメントを禁止すること
- どのような行為がハラスメントに該当するのか
- ハラスメントを行った場合には、その行為者を処分すること
対策としては、労働者(特に、採用担当者)に対し、ハラスメント防止に関する研修を実施するとよいでしょう。また、学生や就活者と接する際の注意事項やマニュアルを事前に整備しておくことも有効です。
厚生労働省HPにおいて、以下の就活ハラスメントリーフレットが公表されていますので、あわせて確認しよう!
求人票と雇用契約
採用後の問題について
やっとの思いで採用をしても、「求人票と実際の労働条件が異なる」としてトラブルに発展するケースも見受けられます。求人情報について、人手不足から少しでも魅力のある条件に見えるようにしようと考える一方、実際に面接に来た応募者の受け答えやスキルでは会社の採用基準に見合わないことから、このような問題に発展することがあると考えます。
この点、職業安定法においては、求人情報に虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしないよう求められています。ただし、変更内容を明確に説明することで、求人票と異なる労働条件を提示することも認められています。
企業におけるリスク
応募者が求人情報を見て応募し、仮に採用面接でもお互いが労働条件に触れないまま就労開始又は採用内定となれば、求人情報の通りに雇用契約が成立したと認定される可能性があります。
ここで、採用内定は基本的に雇用契約(始期付解約権留保付雇用契約)になりますので、採用内定時点において、労働時間、給与、勤務地や職務内容等の契約内容が定まっているものと考えられます。
そして、契約内容変更の提案や合意が就労開始前に適切に行われていない場合、すでに求人情報通りの契約内容で雇用が開始していたことになります。そのため、就労開始後になってから、変更内容を反映した雇用契約書を取り交わす場合、「労働条件の不利益変更」としての議論に発展するおそれがあります。
未然防止と対策
そもそも、求人情報と同じ労働条件で雇用すればトラブルは生じにくいです。
採用面接時点で、求人情報と異なる労働条件での採用を行うことが確定していれば、面接の際に応募者に新たな労働条件の提案及び説明を行い、応募者との認識統一を図っておきましょう。
また、職業安定法に基づき、変更事項を明示する必要があります。変更内容を反映した雇用契約書(書面)を取り交わし、合意を立証できるようにしておきましょう。
なお、後に「労働条件の不利益変更」としての議論に発展させないよう、この雇用契約書は、実際の就労開始前までに必ず取り交わしておきます。
応募者との認識ズレがないように、きちんとコミュニケーションを取っておくことと、就労開始前までに書面でも確認できるようにしておくことが大切だね!
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おすすめの勉強方法
実務において、採用・人材開発やハラスメント関連の相談をいただく機会は多いです。実務寄りの問題が増えていると感じる試験の中で、一般常識科目対策として傾向は一度目を通しておくことをお勧めします。
独学で法改正や実務上注目される論点について追い切るのはかなり大変です。少しお金をかけてでも、独学ではなく通信講座を使って、効率よく最短合格を目指すことが望ましいかもしれません。
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引用元:資格の大原HP
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まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、公正な採用選考や就活ハラスメント等について、ご紹介をさせていただきました。
実務に携わる方の情報整理だけでなく、社労士試験合格を目指している方の後押し(実務イメージ)ができればいいなと思います。