【ちょこっと情報】賃金のデジタル払い

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令和5年4月に解禁された賃金のデジタル払いについて、令和6年8月に「PayPay株式会社」が、同年12月に「株式会社リクルートMUFGビジネス」が、賃金のデジタル払いサービスを発表しました。各社のサービス開始により、今後、会社や給与計算担当者だけでなく、給与を受け取る労働者側の関心が高まることが予想されます。

ちょこシャロくん
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口座振込で受け取った給与を「生活費支払のためにPayPayに毎月○万円入金する」といった手間が省けて便利だね!

賃金のデジタル払いとは

賃金支払いの原則

賃金の支払いに関しては、労働基準法において「通貨(現金)払い」の原則が定められています。その「現金手渡し」の例外として「金融機関口座への振込」が認められています。

そして、今回のデジタル払いもそれと同様に、通貨払いの例外として認められる方法となります。

ちょこシャロくん
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あくまでも「例外」なんだね!

概要のおさらいから、導入時の手順まで確認しておきましょう。

労働基準法第24条(賃金の支払)

1 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

デジタルマネー給与の特徴

賃金のデジタル払いサービスの厚生労働大臣の指定が受けられるのは、PayPay等の「資金移動業」に限られます。

いわゆるSuica等のプリペイド式デジタルマネーや仮想通貨は対象外です。

資金移動業の大きな特徴として挙げられるのは、一度自分のデジタルマネー口座に入金されたお金を、現金に換え、また金融機関口座に移すことが可能という点です。金融機関口座による入出金と比べて、送金スピードの早さや手数料の安さがメリットになります。

指定資金移動業者

前述の通り、賃金のデジタル払いは「指定資金移動業者」のデジタルマネーのみ利用が可能です。

指定資金移動業者とは、厚生労働大臣の指定を受けた業者のことであり、現時点では「PayPay株式会社」、「株式会社リクルートMUFGビジネス」の2社のみとなります。

指定を受ける主な要件としては、次の要件を満たす必要があります。今後は指定を受ける業者が増えてくることが予想されます。

  • 口座残高が100万円を超えることがないようにするための措置を講じていること
  • 1円単位で入出金ができること
  • 毎月1回は手数料負担なく出金等ができること
  • 破綻等した場合に口座残高の全額を弁済できる仕組みを有していること 等

2025年1月1日現在で指定されている2社の詳細は、以下をご確認ください。

賃金のデジタル払い導入時の手順

会社が行うべき対応

賃金のデジタル払いを導入する際に、会社が行うべき対応は主に次の3つです。

① 就業規則への規定(変更)

② 労使協定の締結

③ 労働者の個別同意

① 就業規則への規定(変更)

通貨払いの例外としての取扱いであるため、「就業規則への規定」が必要となります。

なお、厚生労働省が公開している令和5年7月改訂版のモデル就業規則には、賃金のデジタル払いに関する規定がありません。今後、指定資金移動業者が増加し賃金のデジタル払い利用者が増える場合には、規定例が示されるかもしれません。

② 労使協定の締結

労働者と使用者との間で、賃金のデジタル払いを行うことにつき、「労使協定の締結」をする必要があります。

このため、会社が労働者に対して一方的にデジタル払いを強制することはできません。反対に、労働者がデジタル払いの希望をしたとしても、会社がその希望に応じる義務はありません。

③ 労働者の個別同意

デジタル払いを希望する「労働者の個別同意」が必要となります。

会社が、現金払いかデジタル払いかの二択を迫ることのないよう、金融機関口座への振込という選択肢も併せて提示しなければなりません。

「PayPay給与受取」サービスについて

「PayPay給与受取」を利用したデジタル払いでは、金融機関口座への振込と同様、「全銀フォーマット」による振込対応が可能です。

しかし、今後指定される指定資金移動業者によるデジタル払いサービスについては、全銀フォーマットに対応していない可能性があります。

デジタル払いの導入を検討している会社においては、給与振込対応時の手間という観点から、全銀フォーマットに対応しているか否かをサービス業者決定の前に確認すると良いでしょう。

なお、PayPay給与受取サービスの導入にあたっては、前述の手順に加えて、労働者自身がPayPayアプリにてPayPay給与受取の申し込みをする必要があります。申込が完了したら、会社は、全銀フォーマットで使用するための「入金用番号」を労働者から入手しましょう。

今後の動向

賃金のデジタル払いは、タイミーやメルカリハロのようなスポットワーク、いわゆるスキマバイトへの賃金支払いに適していると考えられます。

スポットワークの労働者の中には、即日入金を求める労働者が一定数いると予想します。金融機関口座への振込と比較して、デジタル払いの方が、送金スピードの早さや手数料の安さに魅力があるため、今後デジタル払いの需要が増える可能性があります。

昨今注目されるスポットワークの人材活用により、即雇用・即日入金の対応を上手く行っていくためには、賃金のデジタル払いに対応するための準備をしておくことが望ましいでしょう。

パンフレット等

厚生労働省HP(資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について)において、労使協定書及び個別同意書の雛形が公表されていますので、あわせてご確認ください。

賃金デジタル払いの概要と経緯については、以下の資料(資金移動業者の口座への賃金支払の概要とこれまでの経緯)をご確認ください。

その他、賃金デジタル払い導入のために必要な手続きについては、厚生労働省にて公表されている以下のリーフレット(賃金のデジタル払いを導入するにあたっての必要な手続き)をご参照ください。

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おすすめの勉強方法

実務において、賃金支払いや給与計算関係の相談をいただく機会は多いです。また、第56回試験(択一式労働基準法問4)で既に賃金のデジタル払いに関する出題がされました。実務寄りの問題が増えていると感じる試験の中で、法改正論点や注目トピックの対策として傾向は一度目を通しておくことをお勧めします。

独学で法改正や実務上注目される論点について追い切るのはかなり大変です。少しお金をかけてでも、独学ではなく通信講座を使って、効率よく最短合格を目指すことが望ましいかもしれません。

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まとめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、賃金のデジタル払いについて、ご紹介をさせていただきました。

実務に携わる方の情報整理だけでなく、社労士試験合格を目指している方の後押し(実務イメージ)ができればいいなと思います。

ちょこシャロくん
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社会保険労務士(有資格者)
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