社労士試験とは
この記事では、社会保険労務士試験の受験を検討している方向けに、以下の疑問にお答えします。
- 社会保険労務士試験ってどういうもの?
- 受験資格ってあるの?
- 難易度は?
- 合格までの勉強時間ってどのくらい?
- 出題形式は?
- どうやって勉強すべき?
私は最初、社労士について、『国家資格で、「〇〇士」として独立開業もできて、選択式マークシート試験で、難易度的にもそこそこで、かなりコスパの良い資格だ!簡単に取れそう!』っていう印象でした(笑)
それぞれ、具体的に説明していくよ!
社労士試験とは
社労士試験とは、社会保険労務士になるための資格です。試験に合格するだけではなく、実務経験などの要件を満たして、社会保険労務士会連合会に登録をすることにより、『社会保険労務士』と名乗ることができます。
社会保険労務士の概要や登録について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
申込期間・試験日程・合格発表日
4月中旬※〜5月31日まで
8月の第4日曜日
10月上旬
受験申込の方法には、『郵送申込』と『インターネット申込』の方法があります。
申込方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
受験手数料
15,000円
受験手数料は、受験申込の際に支払いを完了する必要があります。
しばらく毎年『9,000円』だったけど、2021年度の試験から値上げしたのか…
受験資格
社労士試験を受験するためには、以下3つの要件のうち、いずれか1つを満たしている必要があります。
- 学歴
- 実務経験
- 厚生労働大臣の認めた国家試験合格
また、受験申込の際は、受験資格を満たしていることを明らかにする書面『受験資格証明書』を提出しなければなりません。
学歴
基本的に、大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学を卒業していれば要件を満たします。
その他にも、『62単位以上の卒業要件単位を修得した者』などでも要件を満たすので、大学3年生でも受験可能となる可能性があります。
実務経験
学歴や資格がない場合でも、実務経験の要件を満たすことでも、受験可能となります。
主な実務経験要件は、以下のようなものがあります。
- 社会保険労務士事務所で勤務した期間が3年以上
- 労働組合の専従者として勤務した期間が3年以上
- 公務員として行政事務に従事した期間が3年以上 など
厚生労働大臣の認めた国家試験合格
特定の資格取得者であれば、学歴や実務経験がなくても受験可能となります。
- 行政書士試験
- 司法試験予備試験等
- その他の国家資格
出題形式
出題形式は以下の2つです。
- 択一式
- 選択式
どちらも『マークシート形式』で、記述や論述、口頭面接はありません。数字やアルファベットの選択肢を塗り潰すだけなので、分からなくても全問回答だけはできちゃいます(笑)
『択一式』と『選択式』について、実際の過去問を使って、具体的な違いを解説します!
択一式試験
択一式試験では、主に『5つの選択肢(文章)の中から、正しいもの(又は誤っているもの)を選びなさい』という問題が出題されます。
最近では、『正しいものの組み合わせはどれか』や『正しいものはいくつあるか』を回答させる問題も増えてきている印象です。
労働基準法第35条に定めるいわゆる法定休日を日曜とし、月曜から土曜までを労働日として、休日及び労働時間が次のように定められている製造業の事業場における、労働に関する時間外及び休日の割増賃金に関する記述のうち、正しいものはどれか。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
休 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
労働日における労働時間は全て始業時刻:午前10時、終業時刻:午後5時、休憩:午後1時から1時間
A 日曜に10時間の労働があると、休日割増賃金の対象になるのは8時間で、8時間を超えた2時間は休日労働に加えて時間外労働も行われたことになるので、割増賃金は、休日労働に対する割増率に時間外労働に対する割増率を加算する必要がある。
B 日曜の午後8時から月曜の午前3時まで勤務した場合、その間の労働は全てが休日割増賃金対象の労働になる。
C 月曜の時間外労働が火曜の午前3時まで及んだ場合、火曜の午前3時までの労働は、月曜の勤務における1日の労働として取り扱われる。
D 土曜の時間外労働が日曜の午前3時まで及んだ場合、日曜の午前3時までの労働に対する割増賃金は、土曜の勤務における時間外労働時間として計算される。
E 日曜から水曜までは所定どおりの勤務であったが、木曜から土曜までの3日間の勤務が延長されてそれぞれ10時間ずつ労働したために当該1週間の労働時間が48時間になった場合、土曜における10時間労働の内8時間が割増賃金支払い義務の対象労働になる。
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正解は「C」 (Cが正しい選択肢で、他は誤り)
選択肢ごとに詳しく見ていくと…
A 法定休日については、8時間を超えても「時間外労働」という扱いはありません。従って、8時間を超える休日労働の割増賃金については、通常通り「3割5分増」で差し支えありません。
B 「全てが」ではなく、「日曜の午後12時までが」です。日付を跨いだ「月曜午前0時以降の労働時間」は休日労働ではなく、通常の労働時間(深夜労働)とされます。つまり、日曜日(法定休日)の労働が月曜日に食い込んだ場合、日付を跨いだタイミングで、月曜日の労働(→休日労働ではない)がスタートします。
C 正しい記述です。選択肢B(法定休日の日付跨ぎ)とは違って、法定休日ではない日の日付跨ぎ(継続勤務が2暦日にわたる場合)では、始業時刻の属する日の労働が継続するものとして「1勤務扱い」とします。つまり、月曜日の残業が火曜日に食い込んでも、月曜日の残業として扱うということです。
D 選択肢Bと同様、法定休日が絡む日付跨ぎは、暦日単位で考えます。つまり、日曜の午前0時から午前3時までの部分は、「時間外労働」ではなく、「休日労働」として計算されます。
E 「土曜における10時間労働の内8時間が」ではなく、「木曜及び金曜における10時間労働の内各2時間と土曜における10時間労働の内4時間が」です。労働基準法により、通常『1日8時間、1週40時間』を超えたら時間外労働とされます。(1日単位→1週単位で重複しないように残業時間カウントをします。)
よく読んだら、「1日8時間を超えたら残業代がもらえる」とか、「割増率が時間外割増25%、休日割増35%、深夜割増25%」とか、勉強をしなくても知っている人が多い『一般的な知識』で回答をすることができるね!
社労士の試験勉強をすることで、自分の給与が正しく計算されているか、法律を下回ったルールで運用されていないかなど、正しい知識をもって気付けるようになるね!
選択式試験
選択式試験では、主に『文章中の5つの空欄について、選択肢(語群)の中から、正しいものを選びなさい』という問題が出題されます。
通常、空欄5つ(A〜E)に対して、選択肢が20個(①〜⑳)ランダムで用意されています。
最近では、空欄Aに対して4択(①〜④)、空欄Bに対して4択(①〜④)というように、空欄ごとに選択肢が区切られているものも出題されます。おそらく、難しい問題ほどそうなっている気がしますが、割と簡単な問題でも4択になっていることもあるので、なんとも言えません(笑)
次の文中の空欄部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 雇用保険法第14条第1項は、「被保険者期間は、被保険者であつた期間のうち、当該被保険者でなくなつた日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該被保険者であつた期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。以下この項において「喪失応当日」という。)の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼつた各期間(賃金の支払の基礎となつた日数が11日以上であるものに限る。)を1箇月として計算し、その他の期間は、被保険者期間に算入しない。ただし、当該被保険者となつた日からその日後における最初の喪失応当日の前日までの期間の日数が[ A ]以上であり、かつ、当該期間内における賃金の支払の基礎となつた日数が[ B ]以上であるときは、当該期間を[ C ]の被保険者期間として計算する。」と規定している。
2 雇用保険法第61条の2第1項は、「高年齢再就職給付金は、受給資格者(その受給資格に係る離職の日における第22条第3項の規定による算定基礎期間が[ D ]以上あり、かつ、当該受給資格に基づく基本手当の支給を受けたことがある者に限る。)が60歳に達した日以後安定した職業に就くことにより被保険者となつた場合において、当該被保険者に対し再就職後の支給対象月に支払われた賃金の額が、当該基本手当の日額の算定の基礎となつた賃金日額に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下るに至つたときに、当該再就職後の支給対象月について支給する。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 当該職業に就いた日(次項において「就職日」という。)の前日における支給残日数が、[ E ]未満であるとき。
二 当該再就職後の支給対象月に支払われた賃金の額が、支給限度額以上であるとき。」と規定している。
① 8日 ② 9日 ③ 10日 ④ 11日 ⑤ 15日
⑥ 16日 ⑦ 18日 ⑧ 20日 ⑨ 60日 ⑩ 90日
⑪ 100日 ⑫ 120日 ⑬ 4分の1箇月 ⑭ 3分の1箇月
⑮ 2分の1箇月 ⑯ 1箇月 ⑰ 3年 ⑱ 4年 ⑲ 5年 ⑳ 6年
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正解は
A「⑤ 15日」
B「④ 11日」
C「⑮ 2分の1箇月」
D「⑲ 5年」
E「⑪ 100日」
全て数字を暗記をしていれば解ける、基礎的な内容の問題でした。
この問題は、全て『数字の問題』です。条文の中の単語を空欄にしたり、重要判例の文言を一部空欄にしたりといった出題も多いですが、『数字の問題は暗記をしていれば解けます』。
むしろ、暗記をしていないと、大勢が得点できる問題を落とすことになり、しんどいです。5問中3問は正解が求められる選択式試験においては、暗記が重要とも言えます。
出題科目・合格基準
出題科目と配点
出題科目と配点は、以下の通りです。
試験科目 | 択一式 7科目 (配点) | 選択式 8科目 (配点) |
---|---|---|
労働基準法及び 労働安全衛生法 | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
労働者災害補償保険法 (労働保険料徴収法を含む) | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
雇用保険法 (労働保険料徴収法を含む) | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
労務管理その他の 労働に関する一般常識 | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
社会保険に関する 一般常識 | 1問 (5点) | |
健康保険法 | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
厚生年金保険法 | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
国民年金法 | 10問 (10点) | 1問 (5点) |
合計 | 70問 (70点) | 8問 (40点) |
合格基準
合格基準点は、その年の平均点などにより上下するので、一概に何点取れば合格ということは断言できません。毎年の傾向から、大体6〜7割が合格ラインになっています。
- 択一式試験:全科目4点以上かつ総合点45点前後(各科目10点、総合70点満点中)
- 選択式試験:全科目3点以上かつ総合点26点前後(各科目5点、総合40点満点中)
平均点や得点層の割合から、難易度が高い科目については、科目別基準点が「3点→2点」に引き下がることもあります。主に一般常識科目の選択式試験が、基準点引き下げになることが多いです。
不合格者の中には「総合点は超えているのに、選択式のこの科目だけ科目別基準点に1点足りない〜(T T)」ってことも多いんだ…
難易度
社労士試験の難易度は「ちょこっと難関」だと思います。
色々な国家資格比較サイトを見たり、本屋さんで参考書や過去問を見比べた感じ、あくまでも主観ですが、以下のような難易度だと思います。
超難関 :公認会計士、司法試験
難関 :税理士、司法書士
ちょこっと難関:社会保険労務士、中小企業診断士、FP技能士1級、簿記1級
普通 :行政書士、宅建士
簡単 :FP技能士2級、簿記2級
超簡単 :FP技能士3級、簿記3級
そもそも、試験内容が『マークシート方式』のため、試験内容自体の難易度は『普通(難関ではない)』と思います。
社労士試験の合格率を引き下げ、難易度を上げている要因を、ズバリお伝えします。
『一般常識科目の選択式試験の科目別基準点割れ』
いわゆる「足切り」というものです。
選択式試験は、通常「各科目3点以上」正解しなければなりません。5問中3問以上の正解が必要です。
そして、一般常識科目は、『本当に何が出題されるか分からない』というのが特徴です。この一般常識科目の選択式で1点足りずに不合格という状況が数年続くことも珍しくありません…
この「科目別基準点制度」と得点分布等に応じた「合格基準点の設定」が、社労士試験の特徴であり、これを考慮すると『ちょこっと難関』となります。
総合点がすごく高いのに、毎年選択式試験の科目別基準点割れをする人を『無冠の帝王』なんて言うことがあるよ(笑)
必要な勉強時間
合格までに必要な勉強時間数は、『1000時間』と言われています。
これも平均的な、これだけやっている人なら受かっているよね〜くらいの目安なので、そんなに気にする必要はないです。
机に向かってガッツリ問題を解いて解説を読み込んで理解して…といった勉強時間だけでなく、家事のスキマ時間や通勤通学時間に、ちょこっと参考書を読んだり一問一答を解いたりという時間も含まれていると思います。
1日3時間を約1年間というイメージだね!『朝30分、通勤電車往復1時間、昼休憩中30分、夜1時間』でもすぐ達成だね
また、『勉強時間』ばかり気にしては本末転倒です。
大切なのは『勉強時間』ではなく『勉強の質』だと思います。ただ、机に向かってガッツリ勉強だけやればOKということでもなく、最終的には『暗記』の要素もあるので、スキマ時間などに『少しでも社労士の勉強に触れる時間を作ること』がとても大切です。
当サイトでは、スキマ時間に問題に触れられるよう、過去問の一問一答を投稿しています。以下の記事をご覧ください。
勉強方法・試験対策
できるだけ費用を抑えて勉強をしたい方、お金をかけても短期間で1発で合格したい方、予備校に通学する時間が取れない方など、様々な事情があると思います。
私は「そもそもマークシート方式なんだし、独学で余裕でしょ」って思っていましたが、合格まで6回も受験することになってしまいました(笑)
正直、お金や時間をかけたからといって合格できるような資格ではないと思いますので、自分のやる気やモチベーションが保てる方法が見つかるといいですね!
オススメは『社労士24』
『資格の大原』の『社労士24』は、インプット講義が全科目24時間で完結するというWeb通信講義です。
通常の通信講座では、通学講義を録画したようなもので、「あ〜」「え〜」「・・・(無言)」みたいな無駄な時間が含まれていたり、余談や余計な説明をしていることもあります。
社労士24では、専用の動画資料に解説音声を載せているものなので、無駄な時間が一切含まれていません。動画内に人が出てきて、無駄にテキスト該当箇所をポインターでグルグル指し示すなんてこともありません(笑)
科目ごと、項目ごとに区切られているので、スキマ時間、通勤通学の電車内など、好きな時に気になる箇所をいつでも何度でも講義が見れる・聞けるので、本当にお勧めです。
オススメの通信講座について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
独学でも合格可能か
独学でも十分『合格可能』です!
むしろ、仕事をしている方などの場合、せっかく高額な通学講座を申し込んでも、仕事の都合で講義に間に合わない(後から映像講義で追いかける)、課題だけでいっぱいいっぱいになる(他に必要な勉強時間が確保できない)、といった理由から、モチベーション低下などにつながる可能性も懸念されます。
費用面、スキマ時間の活用、まとまった時間の勉強効率などを考えると、『独学(過去問&模試)+社労士24』が最強だと考えています。
オススメの勉強方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
模試を受けるべし!
社労士試験は、午前80分間、午後210分間と、かなりの長期戦です。ペース配分や自分の得意な回答順(年金科目から先に解くなど)の練習をすることが重要だと思います。
各予備校が2回くらい会場受験模試を実施しているので、それを受けてみることをお勧めします。会場で他の受験生がいる緊張感、ペース配分等の練習だけでなく、解説動画を見て学習することもできるので、かなりお勧めです。
私は、市販の模試をたくさん買って、解いて解説を読み込んでを繰り返していました。具体的には、平日日中は仕事でしたので、試験前最後の数週間は、以下のようなルーティーンで勉強をしていました。
- 日曜に本番と同じ時間を測って模試を解く(その日は疲れてしまうので、解答・解説は読まずに終了)
- 月曜〜金曜に科目ごとに正解した問題を含めて解答解説・テキストの周辺箇所を読み込む。関連する項目の問題や過去問を解く。
- 土曜は予備日
過去問は解きすぎると問題と解答を覚えてしまうので、『初見の問題』に対応できる力が必要だね!
模試では、過去問等をベースに独自問題をたくさん解くことができるので、本当にお勧め!
結果や順位・偏差値はそんなに気にしなくていいよ!『復習・理解』が大事!
まとめ
今回の記事では、社労士試験について詳しく書かせていただきました。
社労士試験とは?試験日程や受験資格は?試験科目や合格基準、出題形式は?難易度や合格率、必要な勉強時間は?といったお話をさせていただきました。少しでも興味を持って頂き、社労士試験に挑む方が増えたら嬉しいです!
「社労士試験を受験してみよう!」「具体的に勉強を始めるにあたって、通信や独学など、どういう方法でやろうかな」と思った方は、是非、以下の記事もご覧ください。