【令和6年改正?】在宅勤務手当を「割増賃金の算定基礎から除外する賃金」へ追加する方針
人事労務関係の実務において、よくご相談を頂く内容をQ&A形式でご紹介をしています。
Question
相談内容
- 在宅勤務手当(リモート手当)が割増賃金の算定基礎に含まなくて良くなると聞いたが、詳しく教えてほしい。会社として対応することはあるか?
- そもそも残業代の計算に含まなくてもいい手当ってあるの?
Answer
回答
- 厚生労働省の審議会において、『2024年度にも、残業代を算定する基準から「在宅勤務手当」を外す方向』で調整に入ったとのことです。(※2023年10月9日現在では、未だ本決定ではありませんので、今後の動向に注意が必要です。)
- そもそも残業代に含まなくてもいい手当は、労働基準法施行規則に列挙されている以下の賃金のみです。
詳細のご案内
改正検討の経緯
昨今の新型コロナウイルス感染症対策の一環として、「在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)」は急速な拡大をしました。そこで、在宅勤務に必要な備品の購入費や通信費、光熱費などを手当として補助する目的で「在宅勤務手当(リモート手当)」を支給する会社が増えています。
そして、2023年3月2日に公表された一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の資料(経団連の2021年度規制改革要望)において、在宅勤務手当も「労働とは直接関係がなく支払われるもの」と判断できるものとして、『在宅勤務手当を「割増賃金の基礎となる賃金」から除外すること』が挙げられていました。
2023年9月17日の日本経済新聞の記事『在宅手当、残業代算定から除外検討 手取り減る可能性』より、厚生労働省の審議会において、『2024年度にも、残業代を算定する基準から「在宅勤務手当」を外す方向』で調整に入ったとのことです。
経団連より公表されている資料『在宅勤務手当の「割増賃金の基礎となる賃金」除外項目への追加』につきましては、以下のPDFをご確認ください。
そもそも、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は労働基準法施行規則で限定されているんだ!
そもそも割増賃金の算定基礎から除外できる手当とは?
労働基準法施行規則に定められている「割増賃金算定の基礎から除外できる賃金」とは、次の通りです。
これらに該当しない賃金はすべて割増賃金の計算の基礎に算入しなければなりません。(手当名称に関係なく、支給実態で判断します。)
法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
上記「厚生労働省令で定める賃金」は、「労働基準法施行規則第21条で定める賃金」という意味です!
今後考えられる対応
なお、今回の改正が本決定した場合、会社として在宅勤務手当を割増賃金の基礎から除外するか否かを判断していただきます。これまで通り在宅勤務手当を割増賃金算定の対象としていただくことも可能です。(法を上回る措置なので。)
会社として在宅勤務手当を割増賃金の基礎から除外することとした場合に、対応しなければならない事項は、以下の2点が考えられます。
賃金の決定や計算方法に関する事項は、就業規則に必ず規定しなければなりません。割増賃金計算の条項の変更が必要になることが想定されます。
割増賃金自体は非固定的賃金ですが、その割増賃金の支給単価や支給割合が変更となった場合には、月額変更の対象となり得ます。
「在宅勤務手当を残業計算から除外した月から3か月間」のいずれかの月に「変更後の計算方法による残業代」が実際に払われていて、3か月平均の標準報酬月額がこれまでの標準報酬月額と比較して2等級以上変動があれば、月額変更の対象となると考えられます。
本決定されるかどうか、今後もニュースをチェックしておこう!
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