労働者派遣『3年ルール』とは?延長する場合の具体的な手続きとは?
人事労務関係の実務において、よくご相談を頂く内容をQ&A形式でご紹介をしています。
Question
相談内容
- 派遣できる期間の上限が「3年まで」って聞いたけど、どういうこと?
- 事業所単位の期間制限と個人単位の期間制限ってなに?
- 延長できないの?延長できる場合の手続きは?
Answer
回答
- 派遣元と有期雇用契約を結ぶ派遣労働者については、以下の派遣可能期間を守らなければなりません。
① 同じ事業所への派遣は3年まで(事業所単位の期間制限)
② 同じ派遣労働者を同じ派遣先へ派遣できる期間は3年まで(個人単位の期間制限)
- 事業所単位の期間制限は延長が可能です。延長するためには、意見聴取等の手続きを行う必要があります。
- 個人単位の期間制限は延長できません。
延長するには、複雑な手続きがいるのかなぁ…
詳細のご案内
そもそも派遣可能期間の上限が適用されない者もいる!
そもそも、以下の者については、期間制限の適用がされません。
つまり、派遣元と無期雇用契約を結んで派遣される労働者については、3年の上限がないってことです!
逆に、今回のQ&Aは、『有期雇用契約の派遣労働者』に限った内容ということになります!
派遣可能期間の制限とは?
事業所単位の期間制限は3年とされています。
通常、同一の派遣先に3年を超えて派遣することはできません。
ただし、後述する意見聴取等の手続きを経ることにより、同一の派遣先に3年を超えて労働者を派遣することができます。
この延長をする場合であっても、『個人単位の期間制限』があるため、3年を超えて同一の派遣先(同じ課等)に労働者を派遣する場合には、「別の派遣労働者」を派遣することになります。
個人単位の期間制限も3年とされています。
同じ派遣先(部署や課などの組織単位)には3年までしか派遣することができません。
他の部署や課(組織単位)に異動させることにより、3年を超えて同一の会社に派遣することは可能です。
様々な部署や課を経験させることにより、直接雇用や正社員登用といった、派遣労働者本人のキャリアアップに期待ができると考えられます。
「人事課で3年→経理課で3年→総務課で3年」というように、部署異動があれば、同じ会社に対して同じ派遣労働者(有期雇用)を派遣し続けることができます!
ちなみに、無期雇用の派遣労働者であれば、そもそも上限がないので「人事課に9年」なんていう派遣も可能ということになります。
事業所単位の派遣可能期間の延長はできる?
延長可能です!
厚生労働省の『労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和5年4月1日以降)』の283ページ「5派遣先の事業所単位の期間制限の適切な運用」の「(4)派遣可能期間の延長等」の「ロ」に以下のように示されています。
派遣元事業主から3年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、当該派遣先の事業所等ごとの業務に係る労働者派遣の役務の提供が開始された日から事業所単位の期間制限の抵触日の1箇月前の日までの間(意見聴取期間)に、以下の手続を行うことにより、3年以内の期間であれば派遣可能期間を延長することができる。また、延長した期間が経過した場合にこれを更に延長しようとするときも、同様の手続による(法第40条の2第3項)
意見聴取期間に、派遣先事業場の過半数労働組合(又は過半数代表者)の意見聴取をしなければならないとされています。(法第40条の2第4項)
意見聴取は、派遣先の「過半数労働組合(又は過半数代表者)」に対して次の事項を記載した書面を通知して行うこととされています。(則第33条の3第1項)
- 労慟者派遣の役務の提供を受けようとする事業所その他派遣就業の場所
- 延長しようとする派遣期間(3年以内の期間)
様式は【東京労働局HPの参考例15】をご活用ください。
派遣先は、派遣可能期間を延長するにあたり、次の事項を書面に記載し、事業所単位の期間制限の抵触日から3年間保存しなければなりません。
- STEP1により意見を聴取した過半数労働組合の名称(又は過半数代表者の氏名)
- 過半数労働組合(又は過半数代表者)に通知した事項及び通知した日
- 過半数労働組合(又は過半数代表者)から意見を聴いた日及び当該意見の内容
- 延長後の派遣可能期間
様式は【東京労慟局HPの参考例16】をご活用ください。
派遣先は、STEP2の内容を以下のいずれかの方法により当該事業所の労働者に周知しなければならないとされています。(則第33条の3第4項)
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスクその他これらに準じる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
様式は【東京労働局HPの参考例17】をご活用ください。
派遣先は、「延長後の抵触日」を改めて派遣元に通知しなければならない。
様式は【東京労働局HPの参考例18】をご活用ください。
東京労働局の参考例を使えば、書式自体は簡単に作成ができそうだね!
また、派遣元と派遣労働者とが無期雇用契約を結べれば、派遣可能期間の上限が適用されないから、一番良い方法な気がするね。
個人単位の派遣可能期間の延長はできる?
延長できません!
『労働者派遣事業関係業務取扱要領』の288ページ「6派遣労働者個人単位の期間制限の適切な運用」の「(4)その他」の「ロ」に以下のように示されています。
派遣労働者個人単位の期間制限の延長はできない。
そのため、派遣可能期間3年を超えて同一事業所に派遣をする場合には、組織単位(部署や課)を変更するか、派遣元で無期雇用契約を締結するなどの対応が必要となります。